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■ ほめる2014. 7. 6

 『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』新潟県長岡市出身の太平洋戦争時代の連合艦隊司令長官山本五十六の名言。写真が私の祖父に良く似ていることもあり、山本五十六には特別の親しみを覚えている。また、この言葉には続きがある。『話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。』
 山口先生からお叱りを頂いたこともあるが、ほめて頂いたことは、深く記憶に残っている。稽古中の、短い一言だったが、その言葉が自信につながった。気がつけば、立場変わって、山口先生のほめ方、その言葉はそのまま継承していた。良い時は、“ソウダ“と一言、良いことを伝える。悪いところを指摘するだけで修正できる人は少ないが、子どもの中にも修正できる子は居る。それは、素直さが大きな要因のひとつと考えている。
 一般部での稽古を思い返してみると、“ほめる”という認識が乏しいことに気付かされた。ほめられることによって、相手が変わらなければ、ほめる効果はない。また、ほめる方も変化を期待するからほめることになる。変化の期待を捨ててはいけないと反省しているのだが、稽古ではいつも無色でなければならない。指導者が朱色に塗れば、朱色に染まるように。
 『住するところなきを、まず花と知るべし』、停滞するところがないこと、変化し続けることこそが、美しい花を咲かせる第一条件と、650年前の能楽者、世阿弥は言っている。ひたすら己を高め続けた能楽者としての姿勢を表現した言葉だ。現状に甘んずることなく、変化し続けることだ。自分自身が変わらなければ、人を変えることはできないと心得ている。
 ほめる、任せる、信頼することで人を育て、自分だけの美しい花を咲かせることができるよう、ひとつ上を目指して精進していきたいと思っている。