[戻る]
■ 思い2014.11. 9

 幼い頃子ども心に描いた、将来の自分の姿や夢は記憶の奥に収まっている。それは、折に触れ顔を出してくる。私は、財産や地位を得たいという思いはなかったが、こんな人間になりたいという将来の人間像をぼんやりと描いていた。
 それから五十有余年を経た今を振り返ってみると、確かに財産や地位はないが、自分の理想像は今も追い求めている。残念ながら、野球のイチロー選手やサッカーの本田選手のように、少年時代に明確な自分の姿を描き、その夢を実現しようということはなかった。しかし、人生は少年時代から自分が思い描いてきたとおりに動いていると、いま、感じている。
 京セラ創業者の稲盛和夫さんの経営哲学に「すべての現象は自分の心の反映でしかありません」というのがあるようだ。時間軸を長くすれば、少年時代の夢は実現すると言える。夢が叶わないのは、自分の思いが足りなかったことによる。稲盛さんは自分の思いが足りないことから生じる努力不足に目を向けよと言われている。
 また、稲盛さんは「責任者というのは壊れたレコードのように何度も繰り返し下の者に伝えなければいけない。」と言われている。「何度も同じことを言わせるな」という言葉は、私自身、入門部の稽古中によく口にしている言葉だが、稲盛さんは次のように忠告される。「また同じことを言っているなと思われるくらい言い続けなければならない。そうすれば言われた本人は、いずれそのことを言われまいと避けて行動することで賢くなっていく。」会社の責任者に言われたことだが、子どもも同じであろう。
 同じことを言い続けること。自分の夢を実現するため、指導者として成功するためにこれを実行することが大切だと痛感している。成功の度合いは自分自身の思いの度合い。六十三歳の誕生を過ぎて、ますます合気道への思いを強く持ち続けて行きたいと願っている。