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■ 言葉2015. 4. 5

 今年は少年部卒業四名、そして全員一般部で稽古を続けるとのこと、誠に有難いことと感謝している。中学生の大人との稽古は、基本的には身体ができて、受け身が取れるようになることが必要条件になるので、一〜二年間は中学生同士で稽古することになる。部活動で月に数回しか稽古できなくても、やめずに通ってくれる子もいる。そんな子には「稽古に来て良かった」と、帰ってもらえるよう気をつけているつもりだ。
 福岡県の春日東中学校の体育教師は「教師が何も示範をしない、何もやって見せないで、最高レベルの運動技能を身につけさせる指導法」を目指しておられる。この方法に注目すべきことは、言葉を大切にしていること、言葉勝負で生徒たちの内にある素晴らしい宝を引き出させることだ。
 体育の授業で成果が上がらないのは、技能のポイントを生徒たちに教える時の言葉の精度が低いからだと言われている。曖昧な言葉を曖昧なまま、生徒たちに投げかけているため、意味が分からないままやるから結局できない。たとえば、水泳のクロールで、「リラックス」を指導する場合は、「浮いてるついでに泳ぐというのがリラックスなんだよ」と言う。あなたは浮いているんですか、泳いでいるんですかと質問されるような泳ぎ方がリラックスで、飛沫を上げて一所懸命泳いだらダメということだ、と指導されている。
この言葉による指導で、「七メートルしか泳げなかった生徒が千メートル以上泳げるようになった」、「マット運動ができなかった生徒が体操で九州四位になった」という成果を出しておられる。
 合気道の稽古は、どこの道場でも、始めに指導者が模範を示して、稽古を始めている。観て学ぶことは大切なことなので、“やってみせない“この方法を稽古に取り入れるつもりはない。精度の高い、理解できる言葉で指導すること、そして、耳にたこができるくらい繰り返し繰り返し言うことは指導者にとって重要なことだ。


合気道光輝会/大畑博