[戻る]
■ 思いやりの武道2015. 6. 7

 稽古中の事故は、一瞬の判断ミス、気のゆるみ、強引な力技などから起こる。投げは、受けのレベルに合わせて投げなければならない。受けは、常に最高の受身をめざさなければならない。相対稽古での事故原因は、当事者同士が一番良くわかっているはずだ。同じ過ちを繰り返さないためには、その原因を自分自身がしっかりと認識する必要がある。
 入門部、少年部の指導で注意しなければならないのは、“ふざける“ことがないようにすること。事故につながる要因を許してはならないという気持ちで接しているので、”ふざけ“を見つけた時には厳しく叱る。しかし、真剣に取り組むことができないような稽古をさせていることは、大いに反省している。
 合気道は相対稽古、受け身を取ってくれる相手に感謝しよう。良い受け身を取ってもらえたら、もう一つ感謝しよう。良くない受けなら、良い受け身を示してあげよう。相手との稽古の中で自他共に成長していくのが合気道。相手への思いやりを忘れたら成長はない。
 数年前、少年部演武の組み合わせで、女の子と男の子を組み合わせたところ、女の子が「いやだあ」と一言。男の子は無言・無表情だったが、演武の稽古中は笑顔だった。女の子も嫌な様子もなく演武を終えた。ところが、男の子はあの一言が心に深く突き刺さり、演武後稽古に来ることができなくなってしまった。女の子には「今度来たら謝りなさい」と言っていたが、その機会はなかった。
 女の子にとっては“いやだ”に深い意味はなかった。素直に悪かったことを反省してくれていたのだが残念な結果に終わった。何気なく発したひとことが人を傷つけてしまったのだ。合気道は思いやりの武道、技の上達には“思いやり”が必要であることを相対稽古の中で学んで欲しい。
 また、自分では変えることができないことや体の特徴を言って相手を傷つけること、思いやりのない言葉で相手を傷つけることは決して許すことはできない。


合気道光輝会/大畑博