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■ 武農一如(その2)2017. 6. 4

 大先生(開祖植芝盛平先生)の「生命力生産こそが合気道の原点である」という教えを実践し、四月より週のうち2〜3日間を農作業の日として生活してきた。書籍、雑誌、ホームページで知識を得ながら、また、プロの畑を観察しながら作物を育ててきたが、容易に発育し結実するものと、管理しなければ生育しないものがあり、難しさを実感。特に生育を妨げる害虫、何かのシグナルだと思うのだが、何のために存在するのかと思ってしまう厄介ものだ。
 年を重ねるごとに肉体的にきつくなる畑仕事だが、土を触っていると、地面から身体に伝わってくる“大地の気“が、疲れを癒してくれるのだと信じている。また、雑草に負けるなと励まされている。一日一人で過ごす畑では、草木や生き物と会話する。
 平成二十七年にノーベル生理学・医学賞を受賞された大村智さんは、父親から中学まで農作業を徹底的に教え込まれ、強靭な肉体と精神力を得たと言われる。また、農作業に明け暮れた、辛い少年時代もとても幸せだったと振り返る。ノーベル賞学者のコンラート・ローレンツは「子供の時に肉体的に辛い経験を与えないと、大人になって人間的に不幸だ」言っている。今となっては、やり直すことはできない人にとっては、他人の経験を自分のものとして取り入れるしかない。
 アメリカの研究室から北里研究所に戻ってきた大村さんは、知恵を絞って資金調達を行った。また、当時は人の薬として開発したものを動物に使用していたが、逆に動物用の薬を先にしたのは、「よそと変わったことをやらなければダメだ」と考えたからだ。このことが受賞へとつながって行った。
 私の武農一如実践は始まったばかり、これから知恵をしぼって、より早くより確実に上達するための稽古方法を工夫して行きたいと考えている。指導者は日々進歩していなければ指導者の資格はないと自分自身に言い聞かせている。