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■ 初心者2017. 8. 5

 私が会社に所属していた頃でも定年が近くなるにつれ、人を指導する機会はあっても、人から実技指導を受けることや、毎年行われる人権研修以外の研修を受ける機会はほとんど無くなっていた。合気道の稽古でも、私自身について言えば、講習を受ける・教わる立場になるということは年に一回あるかないかだ。この状況は決して良いとは言えないのだが・・・
 三月の定年退職を向かえ、最初に思ったことは、時間が無くて今までできなかったことの実現だった。そのひとつが自動二輪の免許取得で、家族の承認を得て早速自動車学校に向かった。自動車学校の校長から有難い忠告があったが、諦めずに押し切って入校し、二十代の若者と共に教えを受ける立場になった。
 指導者は予約した時間で変わり、六〜七名の指導者から指導を受けた。初回にメガネを忘れ授業を受けさせてもらえず、一回目はプロテクタの装着であわてふためき、指導者の言葉を聞き逃すまいと必死に耳を傾けたが聞こえないことも有り、前途多難を予感した。無表情で事務的な指導者のあとの、名前を呼んでくれ終始笑顔で丁寧な指導者に救われた。実技は転倒もなく全てを無難にこなして行ったが、最期の見極めで転倒・脱輪し、二輪の難しさを実感した。しかし、見極めは合格、そのまま卒業検定に望み、難なく夢をひとつ実現。
 この自動車学校で、久しぶりに教わる立場になって感じたことは、初心者として教わるという新鮮な感覚と良い指導者のあり方だった。合気道の稽古においても、初心者と接する時には、不安を取り除く必要があることを感じた。受身不十分な初心者と稽古する場合、技よりも受身の取り方・タイミングに重点を置いて稽古することで、相手とひとつになり、楽しく稽古することができる。
 合気道の稽古で相手とひとつになることは、最高の喜びとなる。稽古相手が初心者の場合、目標を技の練磨とすれば足りないが、相手とひとつになることとすれば、お互いに楽しい稽古ができるのではないだろうか。